雑感
台湾が北海道の面積の約半分しかないのに、標高4,000mに届きそうな高山があるっていうのを知ったのは、渡航直前でした。真珠湾攻撃開始の暗号として有名な「ニイタカヤマノボレ1208」のニイタカ山は、台湾最高峰の玉山(標高3,952m)のことだそうです。我々が車で通過した峠も3000mを軽く超えており、階段をのぼると空気が薄いせいで息が切れました!遠くの高山の頂にはうっすら雪が積もり、峠の日陰には雪が残っていました。台湾人と思われる観光客が車を止めて雪を嬉しそうに触っていたのが印象的でした。沖縄のさらに南の台湾で雪が見られるとは、不思議な感じです。
タイワンマスは七家湾渓と呼ばれる川のほんの数kmに生息しているのみで、しかも、30年ほど前に作られた落差10m内外の4つの砂防ダムにより、流れは分断されていました。でも、さすがだな、と感じたのは、この川の支流(高山渓)にあった4つの砂防ダムを壊し、マスが行き来できるようにしたというのです!現在はこの高山渓にも人工孵化したマスの稚魚を放しているそうです。
タイワンマスの資源保護は増殖事業と河川整備の両輪で進める必要があると思いますが、その責任がリャオさん一人の肩にかかっているかと思うと、ちょっと可愛そうな気がします。マス増殖事業の専門家と河川整備の専門家をこの管理事務所に派遣できるようなスキーム、例えば、水産孵化場と開土研共同で現地に専門家を派遣できるような事ができるとすばらしいですよね。
宜蘭(Yilan)市から基隆(Keelung)市までの海岸線の道で、ちょっと不思議だったのは、なにか見覚えのある風景だな、ということでした。道南の海岸線、島牧とか寿都のあたりをドライブしているときの風景にすごく似ているのです。植物は全然違うし、南国のはずなのですが、ちょうど曇っていて、海の色も暗かったのでそんな風に見えたのかもしれませんが、なんだか不思議な感覚でした。
今度もし台湾に行く機会があったら、台中から南の方をめぐってみたいものです。台南料理美味しいらしいし!
そもそも、、、
今回の台湾行きは、一昨年に行った中国の三峡ダムで開催されたシンポジウムで、小生の発表セッションで副座長を務めた陳教授との出会いに発端がありました。そのときに彼が発表したテーマも台湾での豪雨と土砂崩壊に関するもので、お互いにいつか勉強会やろう、ということでその場を別れたのです。2005年4月1日、小生の転勤がないことを確認?したうえで、陳教授とのコンタクトを開始し、勉強会のタイミングを伺っていたのです。昨年9月、タイワンマス増殖に取り組む武陵管理所のLiaoさんが恵庭の北海道立水産孵化場に研修に来ていた、というあたりから、台湾における土砂崩壊の勉強会とタイワンマス調査の2本立てで行けば、という石田部長の強い勧めもあり、今回の台湾行きが実現したわけです。
土砂崩壊とタイワンマス、この両者にどういった関連性があるか、疑わしく感じる方もいるかもしれません。でも、年間降水量が2000mmを超え、北海道の半分の面積に標高3000mを超える山がいくつもあるような台湾では、地震や豪雨による土砂崩壊が頻発していて、川の勾配も急なので、山からどんどん土砂(岩)が流れてくるのです。人々の生活を守るために、台湾でも砂防ダムや利水ダムが作られていますが、一方でタイワンマスのような絶滅が危惧される魚もいて、その保護にも台湾では大きな関心を払っているのです。いわゆる二国間での協力関係が結べないという現状では、日本のODA、例えばJICAの専門家スキームも適用が困難です。いまのところは、日台研究者間の人的交流を継続し、台湾の天然記念物であるタイワンマスの増殖事業に少しでも貢献したいと考えています。
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